虫を扱った慣用句やことわざに見える人間との関係 - 虫の日 2018年6月4日~7月4日 -

日本には虫に関する様々な慣用句やことわざがありますが、それらは虫という存在に対する人々のイメージに由来していることが多く、人間との関係性が垣間見えることもあります。

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人間の感情を表す慣用句やことわざ

虫にまつわる慣用句やことわざはいくつかに大別することができます。例えば、お腹の中に虫がいるという想定で作られた言葉としては「腹の虫がおさまらない」「虫の知らせ」などがあります。これはいずれも虫の何にでも入り込む性質を踏まえて、体の中で虫が行動しているという架空の状況を言葉にしているところが共通しています。「腹の虫がおさまらない」はとても腹が立って仕方がない状態を表す慣用句です。「虫の知らせ」とは特に根拠はないけれど何となく、そうなるという予感があることを意味することわざです。欧米などでは第六感(シックスセンス)と呼ばれるものがこれに当たります。欧米と日本の文化的な違いがよく表れています。

昔の方々の虫へのイメージに由来する慣用句

実際の虫のイメージに由来することわざもたくさんあります。その例としては「一寸の虫にも五分の魂」、「蓼食う虫も好きずき」などが挙げられます。「一寸の虫にも五分の魂」とは小さな姿であっても、ちゃんと魂があるという意味で、小さな存在も馬鹿にしてはいけないという考え方から出来たことわざです。現代の人々とは虫に対するイメージが異なる部分もあります。「蓼食う虫も好きずき」とは蓼という苦い物を好んで食べる生物もいることから、人にはそれぞれ好みがあることを表すことわざです。これらのことわざは生物の性質や様子などをしっかりと捉えることによって、人間の世界でも同じことが言えるのではないかという考え方に基づいています。

虫に抱く嫌なイメージが表れる慣用句

現代の方に虫が苦手な方が多いように、慣用句やことわざでも虫に対する悪いイメージから生まれたものがたくさんあります。例えば「泣き虫」、「点取り虫」、「お邪魔虫」などがそれに当たります。「泣き虫」とは字の通りよく泣く人という意味ですが、弱いイメージが表れています。
「点取り虫」とはテストなどで高得点を取っている人に対し、皮肉を込めて言った慣用句です。「お邪魔虫」もそのまま邪魔な人という意味ですが、どこにでも飛んでくる虫のイメージからこの言葉が生まれています。このように様々な言葉と虫という言葉を組み合わせたものも多く、昭和や明治頃に生まれた比較的新しい慣用句やことわざもたくさんあります。

意外と気づきにくい虫を使った言葉

意外と忘れがちですが、すっかりと生活に溶け込んでいる虫を使った表現もあります。それは虫歯です。虫歯という言い方をしているものの、もちろん歯に虫が付いた様子を示す言葉ではありません。つまり、これも一種の慣用句です。歯には菌が付くことによって虫歯という状態になりますが、昔の方は虫が歯に悪さをしていると考えて「虫歯」と名付けました。このように何か悪いことがあると、とりあえず虫のせいにしておくという言葉は少なくありません。また、「虫が良い」、「虫が悪い」など自分の感情を乗せる言葉もたくさんあります。いつの時代であっても人と虫は切っても切り離さない関係性だったことがよく表れています。

虫から見える命の儚さ

虫の儚さをことわざで表したものもたくさんあります。例えば「飛んで火に入る夏の虫」は火が危ないと分からず光につられて入ってしまう様子がよく表れています。火に入ると一瞬で死んでしまうという儚さも感じられます。他にも今にも生き絶えてしまいそうな様子を「虫の息」という慣用句で表します。虫の命があっけなく終わってしまう様子が感じ取れます。しかし、ただ弱いものという扱いではなく、儚さが見えるのも特徴です。人間にとって最も身近で命の儚さが見て取れる虫たちに、昔の方々はこの世の生を感じ取っていたのかもしれません。日本古来の和歌や俳句、詩を見ても虫を題材としたものは多く、人との関わりの深さが分かります。

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